色彩自然学とはどんな学問か

色彩自然学とは?

自然の色彩環

「色彩自然学」は、色の本質的な力を学び知ることを通して、自然の全体性を把握するための自然学です。

ポイント

色の本質的な力を解明しながら、自然の全体性を把握するための自然学

色の本質的な力は、自然において観察できる色彩現象から解明してゆくことができます。
また、1つの「色」を「部分」としではなく、『色彩環』という自然界全体との関係性において再認識することで、
宇宙の根源法則生命の生長に与えられた設計図までもを学び知ることができます。

「色彩を知る」ことは「自然を知る」ことにつながります。
そしてこの「自然を知る」ことは、いつの時代においても人類にとって大きな課題です。
大自然に包まれた小自然としての私たちにとって、自然を知る限りにおいて、「私」を知ることができ、
それは「私」という生命を、無限に完成してゆく道のりの探究でもあります。

ポイント

色を知ることは、自然を知ること。
自然を知ることは、「私」を知ること

色彩自然学の領域

ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)[1749-1832]の自然学
つまりは『色彩論』と『形態学』を礎としています。

また、自然を研究した先人たち
自然を哲学した先人たちの思想、

また、小自然である人間の本質を追いかけたユング(Carl Gustav Jung)[1875-1961]
人間の集合的無意識を研究した先人たちの知恵も
その領域になります。

他にも、自然と人間との関係性に関わる分野、
神話、昔話、童話などに残る色彩シンボルの分野、
色彩と人間の心理に関わる(色彩心理学・芸術心理学)などの分野

などが、色彩自然学の学術領域だと考えられます。

この学術領域については、今後の学として我々学び、研究する者たち次第で
伸縮可能な可動性をもっていると、私は考えています。

自然とともに生きるための学

無限の生命としての自然を学ぶという魅力が
色という「光と闇の関係性」に込められていることを発見したゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)[1749-1832]は
光を分解し、自然を制御可能なものとしたニュートン(Sir Isaac Newton)[1642-1727]の『光学』を
その著書『色彩論』において痛烈に批判しました。

そのことによりゲーテは学者として周りからの評価を落としましたが、
彼がそこまでして批判をしたのは、
ニュートンが憎かったからではありません。

近代科学の発展は、自然がもたらす疫病や災害、飢饉などの自然の負の側面を恐ろしい脅威だと認識するようになった人間が、
自然はもはや闘い、制御するべき敵として客体化したことによりました。
このような発展のキーマンとして、ニュートンがいました。

ただ、ゲーテにとっては自然は人間の生活世界の一部であるし、
自然に包まれ活かされていて、到底自分と切り離すことのできるものではありませんでした。
ゲーテには、「自然」である「光」や「色」までもを人間の都合で切り刻もうとする「科学」が悪魔に思えたことと、
それに人々が傾倒し、自然を制御できるものだとすることに心酔してゆくことに警鐘を鳴らす必要がありました。
我々が抱かれ、離れては還り、どこまでも大きな故郷である「自然」までも
分析する方法で、一体どんな本質がそこに見えるというのだろう。と。
ゲーテはその近代科学の在り方に強い疑念を抱き、その姿勢をニュートン批判によって見せたのだと言われています。

彼は、このようなことを残しています(要約)。

科学は、自然を制服するためにあるのでしょうか。
それとも自然どう共生するべきかを考えるためにあるのではないでしょうか。
そのどちらかを選択するか、
つまり、この「色彩論」が正当に評価されるかどうかに、
人類の未来がかかっている。

ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)[1749-1832]

現代では、色彩を学び知るためには、
プリズムをめぐって全く別の理論を残したこの二人である
ニュートンとゲーテ、
双方のものの見方を知ることが大切だと言われるようになりました。

色彩自然学とは、ゲーテの色彩論を礎とした学問です。
大自然に包まれた小自然としての人間であることを知っているのは、東洋的精神風土で育っている日本人だと私は思います。
自然への畏敬の念をかねてよりもち、森羅万象にあまねく神がいる精神をもってきました。
色彩自然学に大きな息吹を与えているゲーテやユングはそういった意味でも、
東洋的感覚を備えていて、ユングにおいては曼荼羅などを描いていたことも有名な話です。

彼らのやってきたことも、この学も、
現代人が自然への畏敬の念を活き活きと取り戻すための全体性の学なのだと思います。

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